おはようこんにちはこんばんは、江草です。
今日は、「病床の多い日本でなぜ『医療崩壊』が起きるのか」という記事に対して頑張って書いた連続ツイートをまとめておくことで一記事とします。
一言で言えば「民間病院の病床がまだいっぱい残っているのに医療逼迫するのはおかしい、コロナ感染患者受け入れを強制すべきだ」という主張に反論した一連のツイートになります。
問題の記事はこちらです。
https://toyokeizai.net/articles/-/402702 [1]注:もともとはMSNの記事へのリンクでしたがリンク切れが発覚し2021年7月15日に東洋経済オンラインの記事にリンクを張り替えています
ツイートログ
病床の多い日本でなぜ「医療崩壊」が起きるのか 医療法が専門、東京大・米村滋人教授に聞く https://t.co/aws7X1A6Cb
米村氏は度々、感染患者受け入れ強制化を主張されてますが、妥当とは思えません。
かの橋下徹氏が論拠に引用するなど、本記事の影響が無視できない状況なので反論を試みてみます。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
米村氏の主張はこちらも参照しています。https://t.co/ENuoPfCzYn
米村氏の基本主張は
「医療逼迫と言うが、民間病院の一般病床がまだ余ってるのだから逼迫とは言えない。病床をICUなどに転換して受け入れるよう、行政の権限を強化して医療機関に強制すべきだ」
というものと、江草は解釈してます。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
米村氏の主張には「民間病院の一般病床は容易にICUなどのコロナ対策病床に転換できる」という前提があります。
しかし、実際にはコロナ対策病床への転換は極めて困難で、少なくとも第一波からの半年程度の期間では不可能だったと、江草は考えます。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
なぜなら病床とはただベッドをおけばいいわけでなく、コロナ患者対応できるスタッフや機器設備が必要だからす。
特に慎重な感染対策が求められるコロナ患者対応ができる人材の育成や増員は一朝一夕でできるものではありません。
人工呼吸器不足も指摘されてる中で、ICUの増床も簡単ではないでしょう。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
そもそもコロナ以前の平時には、行政主導で高度急性期病床を限定するように仕向けていた経緯もあります(添付画像参照ください)。
それをコロナ禍のような有事になった途端、一般病床を高度な対応を要するコロナ対策病床に急転換せよというのは、都合がよすぎる考え方ではないでしょうか。 pic.twitter.com/VjB3lB73nN— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
高度な医療を要する患者さんは大病院や公的病院へ。
そうでもない患者さんは中小病院や民間病院・診療所へ。
行政の主導のもと、おおよそそうした医療機関の役割分担で平時には回っていたのですから、今になって「8割の民間病院がコロナ患者を受け入れてない」と言われても理不尽極まりないでしょう。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
確かに、コロナ禍で逆に暇になった医療機関も少なくないと聞きます。
ただ、暇があるからといって、特殊対応や高度な能力を要するコロナ患者対応ができるはずだと考えるのは安直でしょう。
暇といっても、ニーズと失業者の能力が噛み合ってない「構造的失業」に近い状態ではないでしょうか。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
こうしたやむを得ない背景があるにもかかわらず、民間病院にコロナ患者受入を強制するのは、ドラマ「半沢直樹」で民間の銀行に債権放棄を無理やり迫ったタスクフォースのような理不尽さを感じます。
平時からこうした有事に備えてなければ、無い袖は振れないし無理なものは無理だと江草は思います。
— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
ただ、実のところ、米村氏の言う「医療機関に対する行政の介入権限の要否」も大事な医療課題ではあると思いますし、完全な難癖とは思いません。
しかし、どちらかと言うと平時にじっくり進めるべき議論であって、どうしたって余力がない今のような緊急時に無理やり進めるのは得策ではないと考えます。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
あとは細かい点を。
“重症患者ばかりが注目されるが、中等症の患者をきちんと病院に収容できていれば、重症者を減らせる”
そうでしょうか?
まだコロナの治療法は確立されておらず、基本的に対症療法と全身管理が主と認識していましたが、重症者は有意に減らせるのでしょうか。— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
“軽症から中等症患者の受け入れは、設備や専門医のいない機関でも可能なはずだが、そうなっていない。”
これも疑問です。
コロナ患者が急に重症化しうることは周知の事実と思います。
結局は重症化した時に対応できる設備や人材がないと受け入れ可能とは言えないのではないでしょうか。以上です。
— 江草 令 (@exa_ray) January 11, 2021
さらに細かいツッコミポイント
と、以上が連続ツイートですが、さらにさらに細かいツッコミポイントも指摘しておきます。
地域の医療資源の調整は、通常時でもないわけではない。例えば、産婦人科医が少ない地域では地域の医師会が調整したり、大学病院の医局を通じて医師の足りない病院に派遣したりするしくみが効いていた。しかし、パンデミック下では、ただでさえ少ない感染症の専門医を大学医局から派遣してもらうわけにいかない。
「病床の多い日本でなぜ「医療崩壊」が起きるのか 医療法が専門、東京大・米村滋人教授に聞く」
法学者でもあり、これだけ法的整備にこだわっている米村氏にもかかわらず、まさに法的根拠のないグレーゾーンの慣習的制度の代表格である医局人事制度は評価しているというのはダブルスタンダードではないでしょうか。
各人の意志をそれ以上に強制してはいけないということを前提に感染対策を組むべきだというのが、私の基本的な考え方だ。
「病床の多い日本でなぜ「医療崩壊」が起きるのか 医療法が専門、東京大・米村滋人教授に聞く」
この意見自体は同意するのですが、その前提に立つと、もし米村氏の主張通り強制的にコロナ患者を受け入れるさせた医療機関から離職するスタッフが次々と出た場合(無理やり受け入れさせるのですから十分起こり得ると思います)、「スタッフに意志を強制できない」ということになり、やっぱり医療崩壊するのではないでしょうか。
強制論でいくなら、徹底して強制論でいかないと、辻褄が合わないと思います。
――では、閉院・減収時の損失を補填する仕組みを作れば、患者を受け入れる病院は増えるでしょうか。
増えると思う。しかし、そうした提案は厚労省でなかなかに受け入れられていない。
「病床の多い日本でなぜ「医療崩壊」が起きるのか 医療法が専門、東京大・米村滋人教授に聞く」
ならば、この損失補償の仕組み作りこそがまず行政のやるべきこととして一番肝要でしょう。これができないのに強制受け入れだけさせようというのでは話にならないのではないでしょうか。
以上です。ご清読ありがとうございました。
脚注
↑1 | 注:もともとはMSNの記事へのリンクでしたがリンク切れが発覚し2021年7月15日に東洋経済オンラインの記事にリンクを張り替えています |
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