内田舞医師のBuzzFeed記事に潜む能力主義的マイクロアグレッションについて

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この記事を読みました。

コロナワクチンの情報発信で気づく日本の女性の生きづらさ

コロナワクチンの情報発信で気づく日本の女性の生きづらさ
妊娠中に新型コロナワクチンを接種したアメリカ在住の医師、内田舞さん。ワクチンに関する正確な情報発信を続けている中で、日本の根深いミソジニー(女性蔑視)に気づきました。すべての人がありのままで生きられる社会を作るために伝えたいこととは?

 

NHK『フェイク・バスターズ』でも語られていた、内田舞医師への誹謗中傷の話。
あまりにもひどくつらいエピソードの数々に胸が痛みます。

フェイク・バスターズ
ネット上に飛び交う『悪質なデマ』や『根拠の不確かなフェイク情報』。 誰もが手軽に情報発信ができるいまの時代、一歩間違えれば誰でもフェイクの『被害者』『加害者』になる可能性がある。 信頼できる情報を見極めるにはどうすればいいのか?デジタル時代を生き抜くための知恵を、さまざまな分野の専門家とともに考えていく。

すごく勇気がある立派な方だなと思いながら番組を観ていたのを覚えてます。


このBuzzFeed記事に対する一部コメントに「女性差別と関係ない」と批判的なものも見受けられますが、これが「日本の女性の生きづらさ」と関連してないとは言えないでしょうし、基本的な主張としては真っ当なことをおっしゃってると思います。

事実として、医療界や日本社会での男女差別は目に余るものがあります。内田医師への誹謗中傷は許されません。

これらについては、江草も内田医師の想いと共にあります。

 

なのですけれども、どうしてもこの記事でひっかかるところがあるのです。

ご本人が、無意識的な差別として「マイクロアグレッション」に対する問題提起を掲げてらっしゃるからこそ、あえて指摘します。

内田医師は内田医師で「勝ち組」問題について無自覚すぎるように思われます。

 

マイクロアグレッションとは、「政治的文化的に疎外された集団に対する何気ない日常の中で行われる言動に現れる偏見や差別に基づく見下しや侮辱、否定的な態度のこと」と定義されます。
また、被差別者側にしか見えない差別を認識せずに「差別は存在しない」と不平等な扱いがないことを主張すること、などがマイクロアグレッションに入ります。

コロナワクチンの情報発信で気づく日本の女性の生きづらさ-BuzzFeed

内田医師自身がこう言われるならばこそ

私の現在の肩書に関しても、「勝ち組」と称するのは簡単ですが、自分が築きたい人生を築けるように、学生時代からの20年間の血と涙の滲む努力が形となっただけで、誰かに勝つために進んだ道ではありません。自分の興味と意思により出来上がった、これも私の自然体です。

コロナワクチンの情報発信で気づく日本の女性の生きづらさ-BuzzFeed

という言説に潜む「能力主義的な視点」が、もはや昨今ではある種の「マイクロアグレッション」として認識されつつあることに注意しなければいけません。

マイケル・サンデルの『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が話題になってるように、貧富や教育格差の固定化や、能力主義そのものへの批判が強まっています。

あなたがこれまで成功を収めてきたとしても、あなたは独力でそこへ到達したわけではありません。独力でそこへやってきたわけではないのです。成功したのは、そう、自分がとても賢かったからにすぎないと思っている人たちには、いつも愕然とさせられます。世の中に賢い人はたくさんいます。自分が成功したのは、ほかの誰よりも懸命に働いたからに決まっていると言う人もいます。一つ言わせていただけば――懸命に働いている人はいくらでもいるのです。
あなたが成功を収めたとすれば、どこかの段階で誰かが手を貸してくれたのです。あなたの人生のどこかに、すばらしい先生がいたのです。あなたの成功を可能とするこの信じがたいアメリカのシステムを生み出す手助けをしてくれる人がいたのです。道路や橋に投資した人がいたのです。あなたが企業を営んでいるなら――それを築いたのはあなたではありません。誰かほかの人が、それを可能としてくれたのです。

マイケル・サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』p194
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つまり、「自分の立場が自分の努力によって築かれてきた」という認識は既に批判の対象なのです。

もちろん内田医師個人として努力をされてきたことを否定するわけではありません。「能力主義は悪」と単純に断じることもできません。

しかし、内田医師個人的な真偽にかかわらず、こうした「能力主義的言説」だけでも傷つく人がいるのもまた現実なのです。


「マイクロアグレッション」の啓発をされるならばこそ、「女性差別」の問題と同時に、「能力主義」の問題もいかに社会に分断を生みつつあるかも考慮せねばならないでしょう。

 

もちろん、これをもって内田医師への誹謗中傷が肯定されるわけでは当然ありませんし、女性差別をなくしていくことも必要なままです。

ただ、差別問題というのはこのように大変に複雑かつ重層的なややこしい問題で、ある差別解消の運動をしている中で、それこそ無自覚に他の差別にマイクロアグレッション的に触れてしまうことはありえるわけです。

非常に繊細な立ち回りが必要とされ、困難な道程ではありますが、可能な限り広範な視野を持って最大限に注意しなければならないところでしょう。


強調しておきますが、本稿は内田医師の記事への本質的な非難や反対という意図はありません。

あくまで、こういう視点も追加で持たれるとより良いのではないかという提案と思ってください。

 

皆さんにお願いしたいことは、皆さんの周りで、このような気持ちで傷ついている人がいることに気付いてほしいということです。マクロな差別、マイクロアグレッションに関して、気付く努力をしてほしいです。

コロナワクチンの情報発信で気づく日本の女性の生きづらさ-BuzzFeed

 

繰り返しますが、内田医師自身が無自覚な差別に気づこうとおっしゃってるからこそ、あえて一言提案させていただきました。

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

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