『三体Ⅲ 死神永生』読書感想文

読書中の男性のイラスト読書

上下巻で800ページ超え相当の大変なボリュームでしたが、寝不足になりながらも、読み終えました!

話題の中国SF小説、シリーズ完結編『三体Ⅲ 死神永生』読書感想文です。

 

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一言で言えば、期待通り最高に楽しい読書時間でした。 

 

まず、ざっくりした感想を見てから購入を考えたい方のために、「最小限のネタバレでの総評」から始めますが、もう買うことを決めてる、もしくは全く内容の情報が欲しくない方は、ここでお逃げください。

 

 

 

【最小限ネタバレ】宇宙の残酷さとそれに抗する人間的優しさのお話

そもそも前作の『三体Ⅱ 黒暗森林』がキレイに終わっていただけに、今作はどう続くのかと思っていたら、さすがちゃんと(?)人類のピンチがやってきて、唸らされます。

思えば、第一作の『三体』で読者がみな「もうあかん」と思っていた人類の絶体絶命な状況をくつがえした作者の手腕なのですから、『三体Ⅱ』の大団円を覆すのも当然お茶の子さいさいではありましょう。

この、「もうあかん」「これでもう大丈夫やろ」という読者の想像を軽々と飛び越して、二転三転の展開を進めていく実力の高さにほとほと脱帽させられます。

 

そして、『三体』→『三体Ⅱ』で地球スケールの話から太陽系スケールの話へと、スケールが十分に大きくなっていましたが、本作『三体Ⅲ』ではさらにさらにそれを上回るスケールの話になります。

これはネタバレを恐れず言ってしまいますが、もはや宇宙全体規模のスケールです。

完結作にふさわしいこれ以上ないスケールですよね。

 

で、本作は「宇宙の残酷さ」と「人の優しさ」の対比が、ひとつテーマとして背景を流れていると感じました。

いわゆる「なぜ宇宙は十分に広大なのに他の知的生命体の痕跡が一向に見つからないのか」という「フェルミのパラドックス」に対する解答として、「暗黒森林理論」というユニークかつ悲観的な説を提示した前作ですが、本作では宇宙にまつわるさらに残酷な説が提示されます。

宇宙に対して『E.T.』とか『メッセージ』みたいなある程度の温かさを持った異文化交流を期待する方には、本作の描く宇宙はあまりにも辛いと思います。

もちろんSF的な想像の域を出ないわけではありますけれど、確かに、本作の描く「宇宙の真実」は、現状の宇宙の様相を考えた時に誰しも自然に抱くであろう「なぜ宇宙は三次元なのか」「なぜ光速は宇宙の広さに対してこんなにも遅いのか」という疑問に対する、ひとつ面白い宇宙観だと感じました。

このあくまで仮説に過ぎない宇宙観に十分な深みと説得力を持たせる「物語の力」は凄まじいなとつくづく思わされます。

 

この本作の徹底した「宇宙の残酷さ」の描写に対照的なのが、主人公となる女性、程心の徹底した「優しさ」です。

程心は優しすぎて、作中で他の登場人物からも「君は優しすぎる」と非難を受ける始末です。

江草自身、実際読んでいて「程心の行動が非合理的すぎる印象を抱く場面はありましたし、他の読者の方の感想にも「主人公の行動にイライラした」とのコメントを見かけました。

ただ、よくよく考えるとこの「優しさ」が作者があえて描きたかったところなのかとも思うのです。

あまりに残酷な宇宙だからこそ、「優しさ」を描きたかった、そういう強い意志を感じます。

 

 

さて、『三体Ⅱ』のカタルシスのあるストーリーラインに比べると、今作『三体Ⅲ』は全般エモーショナルな展開ですし、「何が起きてたのか」を読者の想像に任せて詳しく描写しない箇所も少なくありません。

いわば前作が「スッキリさせるハリウッドアクション映画」的であったのに対し、本作は「余韻を持たせる芸術肌の映画」な感じです。

 

なので、人によって前作と好みはけっこう分かれるところかなと思います。

実際、「訳者あとがき」によると、作者自身も

出版社とわたしの到達した結論は、第三巻が市場で成功することはありえないので、既存のSFファン以外の読者を取り込もうとするのは諦めるのが最善というものだった。かわりにわたしは、ハードコアのSFファンと自任する自分自身にとって心地よい〝純粋な〟SF小説を書くことにした。

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と「好きに書く分、ウケがよくないかもしれない」と覚悟して本作を執筆していたようです。

個人的には、前作と今作は雰囲気の違いがあることで、かえって簡単に比較できずどちらも好きだなと思います。

ただ、これから読む方にはもしかすると前作と違う読書体験であることは覚悟されてた方がいいかもしれません。

いずれにせよ、面白いことは保証しますけれど。

 

 

 

では、以下にネタバレ含んだ感想を語ります。

といっても、総評はだいたい書いたので、だらだらと思いつくままにコメントするだけになりますが。

 

 

 

【ネタバレあり感想】

本作はなんといっても「干上がる宇宙」とか「光速を遅くする」とか「脳だけを送る」とか、さすがの発想力に度肝を抜かれました。

宇宙の生存競争の結果、低次元化攻撃が進んだために三次元になってるというのは、なんかもう悲しすぎるのですが、すごく面白い。

「宇宙に向けて安全通知をするのはどうしたらいいのか」という問いがストーリーで出てきた時に自分なりに考えてみたものの、光速を遅くしてブラックホール化を促して暗黒領域を作るという防御策も全く思いつきませんでしたね。よく思いつくなー。

雲天明の脳がどういう運命で三体文明に接触し、復活したのか気になるところですが、描かれず仕舞いでしたね。三体文明の出来事は人類の言語では説明しきれないということかもしれませんね。

 

で、さきほど「残酷な宇宙」と「人類の優しさ」の対比を紹介しましたが、まさにその象徴がトマス・ウェイドと程心の衝突ですよね。

たとえば、一度は程心の命さえ狙った「宇宙基準にかなう合理的な男」ウェイドが光速船プロジェクトで程心との約束をなぜ守ったのか。

これは多くの読者が不思議に思ったところじゃないでしょうか。

江草も確かにどうしてだろうと思ったのですけれど、この「合理的思考」が「愛」に道を譲るところ、なんだかんだいって「愛」に対してはウェイドですら一目置いてしまうところ、それが作者の描きたかったこだわりなのかなと。

ご都合主義的と言えば、そうなのですけれど、こうあってほしい、こうなるべきという作者の気持ちがこもってる展開とすれば、これはこれでなきゃいけなかったのでしょう。

最後、実際、小宇宙を捨てる「優しさ」がなければ、大宇宙が滅びかねない結末にもなりましたし、ナイーブな結論ではありますけれど、やっぱり「最後に愛は勝つ」――本作はそういう話なのかなと思うのです。

 

でも、「愛」と言いつつ、まさかのラストでのカップル入れ替え展開にはちょっと苦笑してしまいました。

あんなに程心一筋だった雲天明君がまさかAAと一緒になるなんて。

程心も程心で、乗り換え早すぎですよ。

そりゃプラネットブルーやシャトルにそれぞれ二人きりで取り残されたのだから仕方ないとはいえ、恋愛マンガもびっくりの世知辛い展開。作者は酷なお方です。

 

あと、ちょっと本作で気になったのは脇役の扱いの軽さですね。

フレスなんて、あんなに程心を大事にしてくれてたのに、特に別れのシーンも描かれず、さくっと程心とAAは冬眠しちゃって、その間にフレスはいつのまにか亡くなってるという。

さすがに不憫では。

他では、ハンターもあのあとどうなっちゃったんだろうと思いますし。

とはいえ、この辺も詳細を描き出すとただでさえボリュームのある本作がまとまりきらなかったかもしれないので、脇役を描くシーンをある程度カットするのは仕方なかったのかもしれませんね。

 

 

とにもかくにも、人類の宇宙の壮大な歴史とその終わりまで描き出す本作は、最高のエンターテイメント作品の一つであることは違いないですね。

完結を見届けれて満足です。 

 

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

 

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