おはようこんにちはこんばんは、江草です。
今日は、複雑化する社会システムにもはや私たちが太刀打ちできなくなる日が来るかもよ、というちょっと恐いお話です。
税金や社会保険のシステムほんとわけわかめ
確定申告の軍靴の音が聞こえてくる時期ともなり、昨年分の源泉徴収票の見方を解説していた記事が話題になってました。

記事を書かれた方は大変丁寧に解説してくださってるものの、それでも、税制改正もあったあおりもあってか、非常に長く複雑な内容となってます。
案の定はてブのコメントも「税制わざとわかりにくくしてない?」「税制が複雑すぎる」「デジタル化、自動化してほしい」などなど、税制のわかりにくさに対する非難の声で占められています。
いや、実際ほんと税制わかりにくすぎますよね。
ものすごく煩雑なデータ入力と複雑な計算過程を経て、ようやく昨年分の、自分が払うべき税金と、実際に入手できた自分の手取りが判明するんですから。
企業ならまだしも、個人レベルでの現実の収支が次の年の2月ぐらいにならないと把握できないなんてさすがにおかしいように感じます。
自分の将来もらえる見込み年金額即答できますか?
複雑なのは税金だけじゃありません。
社会保険もめちゃんこややこしいです。
みなさん、自分の将来もらえる見込み年金額を即答できますか?
そもそも、どうやって計算されるか把握してますか?
ねんきん定期便等々調べればある程度は自分の年金の見込みを示してくれるのですが、厚生年金に関しては自分の月収の増減(標準報酬月額)も影響するので、シンプルな年功序列制度で働いてる方以外は具体的な額が最後までどうなるか分からない仕組みなんですよね。
老後に必要な資金は2000万円だなんだと言われた話もありましたが、そもそも自分が将来もらえる年金額がパッと分からない複雑なシステムでは将来計画もヘッタクレもありませんよね。
診療報酬制度も複雑怪奇
さらに、医療費の計算に関わる診療報酬制度も複雑怪奇です。
時折、患者さんから今日の医療費ってどれぐらいになりますか、と尋ねられることがあるのですが、正直分かりません。
なぜって患者さんごとにケースバイケースであることももちろんあります。
しかし、現状あまりにも診療報酬制度が複雑化した結果、もう様々な診療行為の点数やら、物品の点数やら、加算の点数やらが入り乱れていて、普通の医師レベルでは正確な個々の医療費を計算どころかざっくり推計するのも難しいレベルになってるんですよ。
診療報酬制度の点数とその制度をまとめた本がこの世にあるんですが、殴ったら人を殺せそうな厚さですからね。
もうほんとむちゃくちゃややこしくなってるんです。
で、江草も以前問題にしたのですが、昨年の診療報酬改定では、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の方の予防的乳房切除術[1]まだ乳がんを発症していない方を対象とした手術なので基本的には難しい手術ではありませんが、乳がんや卵巣がんと関係ない人の関係ない検査の画像診断を放射線科が積み残しているだけで、なぜか手術が保険診療でできなくなるというバグまで発生しました。
診療報酬制度が複雑になりすぎて、改定を担当した人達にも想定できないことが起きてしまったと思われるとんでもない状況です。
今後、診療報酬制度がさらに複雑化することはあっても簡易化することはなさそうなので、よくわからない理由で診療が制限されるケースがさらに増えていく可能性は十分ありえると思います。
IT界隈でもレガシーシステムが問題に
さらにさらに、社会制度だけでなく、IT界隈でも不穏な様子があるんです。
IT業界と言えば、なんとなく常に新しいものに刷新されていっているイメージがありますが、一部のシステムでは古いシステム(レガシーシステム)が残ったままとなっており重大な問題となっています。
レガシーシステム問題で、有名なのはみずほ銀行のシステム刷新です。
2019年の話なのでわりと記憶に新しいところでしょう。
「IT界のサグラダ・ファミリア」との異名を持つ複雑怪奇極まる銀行システムをようやくなんとか統合刷新したという血涙なくしては語れない恐ろしい話です。
古くて複雑なシステムでは、どのような仕様になっているのか記録もマニュアルも残っておらず、もはや誰にもこのシステムがどうやって動いているか分からないということが少なくありません。
どうやって動いてるか分からないものをアップデートするのは至難の業です。
かといって、そのシステムで業務が動いているので、止めるわけにも、そのシステムを捨てて全く新しいものに変えるわけにもいかず、結局誰も触ることができないままどんどんシステムが古くなるのに任せるしか無いというまさにトラップです。
このように、複雑怪奇で誰にも容易に把握できないブラックボックスと化したシステムはIT業界でも一大問題なのです。
スパゲティコードモンスターにひれ伏す私たち
税制も、社会保険制度も、医療制度も、ITシステムも、複雑化に歯止めがかかる様子がありません。
複雑化すればさらに私たちが理解することが困難になっていきます。
となると、何か問題が起きても、何が問題なのか、何が原因なのか、どうしたら直せるのか、もはや人間には分からず、ただその問題を抱えたシステムのまま従うしかなくなるという恐ろしい事態も絵空事とは言えないでしょう。
ぐちゃぐちゃに絡み合って全貌がわからなくなり、ほどけなくなった複雑なコードは、俗にスパゲティコードと呼ばれます。
どんどん巨大化し怪物と化したスパゲティコードモンスターに私たちが支配されるのはそう遠くない未来なのかもしれません。[2] … Continue reading
以上です。ご清読ありがとうございました。
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