「誠実な批評家」という貴重な存在

美術館のイラスト人間

世の中「誠実な批評家」という存在は貴重なんだろうな、とふと思ったのです。[1] … Continue reading

とくに、クリエイターさんにとってはそうかなと。

漫画家とか、小説家とか、アーティストとか。

 

有名なクリエイターの方が作品を発表したり、あるいは有力なプラットフォームで作品が発表されたりすると、最近はネット上で感想が山のように集まりますよね。

でも、この山のような感想ってのが曲者なんだろうな、と。

 

たとえ高評価が多かったとしても、「ファンだから甘い評価になってる」というバイアスがかかっていたり、「みんなが高評価だから良いものだと思った」というポジティブフィードバックで増幅されてる可能性が残ります。

逆に、低評価が多かったとしても、「アンチだから厳しい評価になってる」というバイアスがかかっていたり、「みんなが低評価だから悪いものだと思った」というネガティブフィードバックで増幅されてる可能性が残ります。

 

こうした個人的好悪に伴うバイアスや、集団心理的な感情増幅効果はバカにならないんですよね。

 

だから、高評価が多いからと得意げになっていたら、逆に低評価をつけている少数意見の中に本当は的を射たものがあるのかもしれません。

あるいは、低評価が低いからとショックをうけていたら、逆に高評価をつけている少数意見の中に本当は的を射たものがあるのかもしれません。

 

でも、山のような感想が来ると、そうした少数意見はなかなか注目しにくいものです。

とくに、低評価、ましてや非難轟々の意見が襲いかかってきている時なんて、スマホを開くことさえ恐ろしくなるでしょう。

その中にわずかに含まれてる好意的な意見を見る前に、先に精神がやられてしまうに違いありません。

 

 

このように、ネット上で大量に感想が寄せられるようになってしまうと、作品の良かったところ、悪かったところを、そこから汲み取るのは難しいでしょう。

だから、ファンでもなく、アンチでもなく、良いところは良いと言ってくれて、悪いところは悪いと言ってくれる「誠実な批評家」が居てくれるのは非常にありがたく、貴重な存在ではないでしょうか。

 

それも、「誠実な批評家」というものは、ヒットする前、有名になる前に見つけておかないといけないのだと思うのです。

ヒットして人気者になってから近づいてくる人は、その人気にあやかろうとしてるだけの人かもしれず、本当に誠実なのか見分けにくいですし、自分自身もヒットして有頂天になってる時に「厳しい意見」も言ってくる相手はつい避けてしまうかもしれません。

 

もっとも、多くの場合、担当の編集者さんがそうした批評家を担ってる立場ではあるでしょう。

ただ、編集者もあくまで販売側の人間ではあるので、利益相反の存在は否定しきれないですよね。

もちろん、真にプロフェッショナルな編集者なら良い作品のために誠実な姿勢で批評をしてくれるはずですが、ダメダメな編集者で「誠実な批評家」でない人もやっぱりいくらか存在するでしょう。

 

 

じゃあ、どうやって「誠実な批評家」を見つけるのか、というのは実のところ思いついてません。

身も蓋もない話ですが、本当に運良く初期の頃に「誠実な批評家」の目に付くしかないんじゃないでしょうか。

その「誠実な批評家」さんはある意味ではファンであり、作品を追っかけてきてはくれるものの、ダメな時、ダメな所はちゃんと指摘してくれる。

そうなって多分初めて理想形なのだと思います。

 

まあ、これはなかなかに奇跡的な状況です。

だから、おそらく多くのクリエイターさんは「誠実な批評家」不在のまま、自身の作品の良い点や悪い点をなかなか正確に把握できないまま頑張ってらっしゃるんだろうなと。

でも、時にどうしても感想が気になって、つい開いたネットが呼び寄せる感情の津波に飲み込まれてしまう。

それで、心が折れてクリエイター活動を結局辞めてしまう人も少なくないんじゃないかなと思うのです。

 

弱肉強食の世界なのだから、それはその程度の実力のクリエイターだったと言えばそうなのかもしれません。

でも、江草も色んなジャンルの色んな作品を楽しませてもらってる一人として、もっともっとクリエイターさんが増えて活躍する世の中を願ってしまうのです。

そのためにも、なんとか「誠実な批評家」との出会いが増えて、ネットの闇に堕ちるクリエイターさんが減って欲しいなとちょっと感じたのでした。

 

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

 

脚注

脚注
1 ここでいう「誠実な批評家」というのはどういう人かというと、イメージ的にはエスパー魔美の『くだばれ評論家』の回に出てくる批評家が分かりやすいでしょうか

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