医療従事者を自衛隊か何かと勘違いしてません?

医療スタッフのイラスト医療

おはようこんにちはこんばんは、江草です。

今日は「医療従事者の多くは普通の一般市民であることが忘れられてませんか」というお話。

 

医療従事者にコロナ診療を強制する動きが進んでますが

江草もたびたび反対意見は述べていましたが、残念ながらどんどん医療機関にコロナ診療を強制するような動きが進んでいます。

 

たとえばこれは医療機関にコロナ患者受け入れの勧告ができるようにする法律改正案が検討されてるという今日のニュースです。

新型コロナウイルスの患者の受け入れや病床の確保を進めるため、政府は感染症法の改正案に、厚生労働大臣や知事が医療機関に協力を勧告できる規定とともに、勧告に応じない医療機関を公表できる規定を盛り込むことを検討しています。

「病床確保へ 医療機関に協力を勧告できる規定も検討 政府」-NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210115/k10012815231000.html

 

また、先日には後期研修医をコロナ診療に徴用しようというワイドショー番組内での提言が物議を醸しました。

 

実際、コロナ患者の受け入れ体制が逼迫して、国全体として厳しい状況に置かれてるのは理解しています。

ただ、そうだとしても、これらの議論の際、コロナ診療をするように強制される医療従事者たちがそもそもどういう人たちであるのか、ということがすっぽり忘れられてはいないでしょうか。

一時期、コロナ診療に携わる医療従事者に対し「コロナファイター」などというあだ名が付きかけたこともありましたが、昨今のコロナ診療強制化の動きも見ていると、医療従事者はコロナという外敵から国を守ってくれる「自衛隊」のような存在に勘違いされてるように感じます。

医療従事者のほとんどは自衛隊のような兵士でもなければ、ファイターでもなく、ただの一般市民です。

 

ほとんどの医療従事者が疫病と戦う覚悟で仕事を選んだわけではない

救急現場で命を救いたかったり、がんの治療に貢献したかったり、患者さんに寄り添い心理的サポートをしたかったり。

なぜ医療職を選んだかはもちろん人それぞれと思いますが、実際のところコロナのような疫病と戦う覚悟で医療職を選んだという人は稀でしょう。[1] … Continue reading

 

医療従事者も自分の身の安全から確保が基本

もちろん、医療従事者は、自分の関心領域に限らず患者さんを分け隔てなく診療するのが基本ではあります。

しかし、それがたちまち「自分の命を賭してまで」という意味になるかと言えば別問題です。

平時に想定される、がん診療や怪我といった日常診療では、自分の命が脅かされることはほとんどないので[2] … Continue reading今回のコロナのような自分の生命リスクを帯びながらの診療という覚悟まで出来てる医療従事者は残念ながらかなり少ないはずです。

ましてや、コロナでは家族にも感染させるリスクが高いわけですから、家族の健康被害のリスクも考えると、医療従事者であってもコロナ診療にはたじろいでしまうも仕方がないところでしょう。

一見冷たいようですが、心肺蘇生法でもまずは救助者の安全の確認から始まることから示唆されるように、医療従事者もまず自分の身の安全から考えるのは医療の基本的なスタンスでもあります。

 

それでもコロナ診療する医療従事者の矜持に敬意を

そんな自身のリスクがある状態にもかかわらず、コロナ診療に少なくない医療従事者が身を捧げているのは、救う力を持っている者の矜持や内発的な義務感からであって、敬意を払うべき尊い利他的行為です。

だからこそ、決してこれは「医療従事者なら当然そうすべきことだ」と他人から言われるようなものではありません。

そうした「当然だ」と言わんばかりの態度は、医療従事者に対し、極めて傲慢な態度に映ります。

入職時に「有事の際は戦場に出ることがありえる」と皆が覚悟している自衛隊と異なり[3]なので、江草は自衛隊の方々はとてつもなくすごい仕事だなと感じています。もっと評価や待遇はよくされてよいと思います。、医療従事者のほとんどは「戦場に出る」想定をしてないし、訓練もされていないし、強制される言われもない[4] … Continue reading、ただの一般市民です。しかも、今回あれこれ言われてるのは公的機関でさえない、民間の医療機関だったりします。

なのに勝手に「やってくれるもの」と期待して、勝手に「裏切られた」と感じて、勝手に「強制力」という暴力を振るうのは、京アニに火を付けた容疑者と同じぐらい身勝手な思考と思います。

 

無理に進めても離職者が増えるだけ

いずれにせよ、「医療従事者は当然コロナ診療に携わるべき」という傲慢な態度で強制策を推し進めても、ただ離職者が増えることが目に見えています[5]医療従事者のほとんどはただの労働者なので辞めようと思えばすぐ辞められます

「強制」「強制」と安直な対策に走らず、医療従事者への誠意や敬意が見える対応から進めないと、結局はコロナ診療にも弊害が出て本末転倒なのではないでしょうか。[6] … Continue reading

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

脚注

脚注
1 感染症科関連のスタッフの方はそれぐらいの意気込みの方もいくらかいらっしゃるかもしれませんが、感染症だってHIVやら寄生虫やら何やらたくさんの種類があるので、コロナのような感染力と致死力が高い相手を覚悟されてたかはやはり人それぞれかと思います。
2 平時でもC型肝炎患者さんや放射線被曝など、医療従事者へのリスクと言える診療はあるので、それらはちゃんと医療従事者への被害を防ぐように対策されています。それに、今回のコロナほど露骨に医療従事者のリスクが高い診療はほぼ聞きません。
3 なので、江草は自衛隊の方々はとてつもなくすごい仕事だなと感じています。もっと評価や待遇はよくされてよいと思います。
4 一応、医師法や医療法では国民の健康に奉仕せよ的な努力目標みたいな条文はありますが、これのみで医療従事者に何でも強制できる根拠とするのは難しいかと
5 医療従事者のほとんどはただの労働者なので辞めようと思えばすぐ辞められます
6 ちなみに、アメリカでは社会的に「兵士」に対する敬意の高さが凄まじいらしいです。誰かに国を守るように期待するなら、その方たちを社会全体として支えるような気概はやはり必要なのだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました