> [!NOTE] 過去ブログ記事のアーカイブです 経済思想家・経営コンサルタントの倉本圭造氏著『**「みんなで豊かになる社会」はどうすれば実現するのか?**』という本を読みました。 [Amazon.co.jp: 「みんなで豊かになる社会」はどうすれば実現するのか?: 「レペゼンする知識人」による「自分軸ビジネス」が社会を変えていく eBook : 倉本圭造: 本](https://www.amazon.co.jp/gp/product/B083H5ZSZS?&linkCode=sl1&tag=exaaid-22&linkId=fd64d7975700e5c68367ca48f65f656a&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl) ひょんなことでネット上で見かけた倉本氏の記事を見かけて、氏の感覚に興味を持ったので読んでみました。 kindle unlimitedですと読み放題で、出版社の名前もないのでおそらくKDPでの自己出版のようです。 自己出版であることやタイトルはちょっとばかりうさんくささがありますが(失礼)、これはまたとても良い本でした。 「みんなで豊かになる社会」を本気で目指したいという倉本氏の熱意が詰まった一冊です。 amazon上のご自身が書かれたと思われる紹介文がこれまた熱くて長いので、これを読んでいただければ十分かと思いますが、一応江草なりにざっくりとどんな内容かを紹介しておきます。 では、「みんなで豊かになる社会」はどうしたら実現できるのか。 今やSNS時代にあって、過激な両極端な意見ばかりが飛び交い社会の分断が問題となっています。 各派互いに相手を「悪魔化」して、「絶対許すまじ」と攻撃し排除をしながら、仲間うちでは「いいね」しあってエコーチェンバーに引きこもる。 こんなことでは「みんなで豊かになる社会」は到底できないですよね。 そこで大事になるのが「メタ正義感覚」**と**「ドラクエ化によるエマルション的課題の解決」**だと倉本氏は言います。 「メタ正義感覚」は、本書のかなりの部分を割いて倉本氏が説明してる概念なので、一言で言うのは難しいですが、大雑把に言ってしまえば、「相手が自分と異なる【正義】を有してることを認めた上で、互いの【正義】を俯瞰して見る感覚」です。 絶対おかしいはずなのにどんなに批判しても生き残る「アイツラ」も、それだけしぶとく残るからには実際には社会として「何らかの意義」を果たしてることが多い。 「アイツラは悪だ!」とただ彼らを撃破したら、それはそれで彼らが担っていた役割が空白となって、社会的にはかえって混乱を生んでしまいかねない。 だから、「これだけしぶとく生き残るアイツラの【正義】が果たしてる役割はなんだろう。その役割を別のうまい方法で補うことはできないか」と、あえて「アイツラの存在意義」に想いを馳せることが大事なんですね。 そして、次の「ドラクエ化」とは、十分に実行可能なようにチュートリアルやレベルシステムが適切に設計されたゲーミフィケーションのことで、要は普通の人でも「やってみよう」「できそう」と思えるような具体的な仕組みづくりです。 相手をただ破壊するのでなく、こういう地に足がついた具体的な仕組みを創造してこそ、敵対する「水と油」を融合させる(エマルション=乳化)ことが不可欠な「エマルション的課題の解決」ができるのだというわけです。 この提案に、早世された瀧本哲史氏も「交渉は相手の利害も考えた上で解決策を考え抜くクリエイティブな作業だ」と語ってらっしゃったことを思い起こしました。 破壊(論破)ではなく創造が大事という点で通ずるものを感じます。 > そしてそのうえで、「自分にとって重要度は低いが、相手にとっては高い争点」を譲歩したり、逆に「自分にとって重要度は高いが、相手にとっては低い争点」を譲歩してもらえるよう提案したりすることで、お互いにとっての目的を達成できる道を探ってみることが必要なのです。どうでしょう? > > 交渉というものは、ゼロかイチかの単純なものではなく、非常にクリエイティブなものであることがおわかりいただけたでしょうか。 [Amazon.co.jp: 武器としての交渉思考 (星海社 e-SHINSHO) eBook : 瀧本哲史: Kindleストア](https://amzn.to/3U2J5z2) もちろん、こうした「エマルション的課題の解決」が「言うは易く行うは難し」なのは倉本氏自身も認めてらっしゃいます。 しかし、敵対勢力を設定しその破壊を目的とするような活動ではなく、相手勢力の問題点だけでなくその果たす役割もしっかりと分析した上でその役割を置き換える創造的解決策を生み出す活動をしてこそ、「民主主義社会」ひいては「みんなで豊かになる社会」が実現可能なのだと。 まさしくそれはその通りだと江草も思います。   とはいえ、ついつい頭に血がのぼると「ムカつくアイツラをぶっ潰せ!」になりがちなのが人間のサガ。 ときどき江草もやっちゃってますし、反省して本書の教えを胸に日々気をつけたいと思います。     本書はボリュームもそこそこありますが、読みやすい文体でさらりと読めると思います。 とくにkindle unlimitedに加入されてる方は無料で読めるのでぜひオススメです。   以上です。ご清読ありがとうございました。 #バックアップ/江草令ブログ/2021年/9月