京都大学のオンライン公開講義プロジェクト「立ち止まって、考える」シーズン3が始まっています。
早速、児玉先生の倫理学講義「パンデミックの倫理学一年後…」を視聴しました。
昨年の児玉先生の講義が大変面白く、今回の配信もとても楽しみにしていました。
いまやパンデミックの戦況は昨年よりよくなるどころか一層悪化している中、各所で人々の倫理的対立も目立つようになってきています。
この現状を児玉先生がどう語られるのか。
要注目の講義です。

視聴後の感想としては、やはり素晴らしいの一言でした。
昨年は4回講義だったところ今回は1回限りの講義のご様子で、時間の制限から各課題に深く切り込むことまではされなかったのは少し残念ではあります。(お忙しいかもしれませんが、もう連続講義で毎週やってほしいぐらいです)
ただ、パンデミックに関連する倫理的課題をきっちり概括して1時間の講義にまとめられてる児玉先生の手腕はさすがです。
ワクチン接種の公平性やロックダウンの是非など、ネット上でも常に白熱した議論が交わされてるトピックの要所を押さえてくださってます。
最初は「効率性を重視します」としていた接種順位のルールが、いつの間にか後付けで例外規定が加わっていく不公正さの指摘は大変に鋭く、刺激的でした。
「疫病は実は法律上は災害の定義に入ってない」という点も、江草は恥ずかしながら知らなかったので、学びになりました。
で、ほんと児玉先生がおっしゃるとおり、パンデミック対応というのは「トランス・サイエンス問題」なんですよね。
科学だけでは解決できない問題なのです。
医師インフルエンサーに「科学的根拠」と声高に叫ぶ人は多いです。確かに「科学的根拠」は大事です。
しかし、その反面、失礼ながら、「倫理的根拠」は考えてらっしゃるか疑問に感じる発言もしばしば目にします。
科学だけの問題ではない、社会全体で取り組む問題だからこそ、児玉先生が提示されるような倫理的な視点でも見ることが大事ではないでしょうか。
1時間という短時間でありながら、パンデミックの問題を考える上で重要な視点を提供してくれる今回の児玉先生の講義は、そういう意味で万人が見るべき素晴らしい配信だったと思います。
また江草も色々と考えてみたいと思います。
ありがとうございました。
できれば、続編もお待ちしています。
以上です。ご清読ありがとうございました。
【オススメの児玉先生の著書、訳書】
せっかくの機会なので児玉先生の書籍もオススメしておきます。
・『誰の健康が優先されるのか――医療資源の倫理学』

「医療資源の配給の倫理を考える」というテーマの本書。
少し厚くて高価ではありますが、今回のパンデミックにおいて医療逼迫やワクチン不足が問題となるなか、今まさに重要な一冊です。
紹介記事も書いてます。

・『功利主義入門──はじめての倫理学』

ワクチン配分の公平性をめぐる議論でも「順位なんて気にせずとにかく最大数の人々に打ちまくるべき」という功利主義的な主張は人気です。
でも、その功利主義とはどういうものか。どのような利点と欠点を有している考え方なのか。これらをあまり知らずに言うのは危険ですよね。
この「功利主義」入門を皮切りに倫理学への導入も図る、児玉先生の非常に読みやすく面白い新書です。
【参考記事】
また、江草自身、何度かパンデミックの倫理的課題について稚拙ながら記事を書いてますので、付録としてつけておきます。(一部の医師インフルエンサーの発言に苦言を呈してるものばかりですが)



コメント