“立ち止まって、考える”オンライン講義―伊勢田先生「科学哲学の観点からみたコロナをめぐる言説」第二回感想文

先生のイラスト科学

おはようこんにちはこんばんは、江草です。

今日は、”立ち止まって、考える”の伊勢田先生の講義第二回の感想です。

今回も大変に面白かったです!

 

↓今からでも講義をアーカイブ動画で見ることができます。

 

↓第一回の時の江草の記事はこちら。

"立ち止まって、考える"オンライン講義―伊勢田先生「科学哲学の観点からみたコロナをめぐる言説」第一回感想文
"立ち止まって、考える"伊勢田先生の「科学哲学の観点からみたコロナをめぐる言説」第一回講義の感想文です。

 

「コロナを巡る論争がかみあってないのはなぜか」

今回の伊勢田先生のお話のテーマは、江草が勝手に一言でまとめると「コロナを巡る論争がかみあってないのはなぜか」というところでしょうか。

みんな気になる非常に興味深いテーマじゃないでしょうか。

 

講義に出てきたキーワードを適当に散りばめつつ、ざっくり振り返ってみますね。

  

立場が違えば世界が違う――「通約不可能性」

違う立場の論者からは世界そのものが違って見えているという科学哲学における概念――「通約不可能性」

今回のコロナ禍でもこの「通約不可能性」のようなことが起きて議論が噛み合ってないことはあるのではないかと、伊勢田先生は指摘します。

確かに、同じ現象やデータを見ていても、お互い自分の主張に都合の良いように解釈してしまうことは、頻繁にあるように江草も感じています。

 

唯一の正解でもなく、何でもありでもなく――「多元主義」

だからといって、どう主張してもよい、何でもありというわけでなく、多元主義的な感覚を持って、相手との「共通の足場を確認する」ことが大事と伊勢田先生は強調します。

いわば、「通約不可能」ではなく、「通約困難」なだけというところでしょうか。

 

具体的には、相手との共通の足場を確認する方法として

・相手の立場から世界がどう見えているか想像してみる。

・相手が自分に反対するのは無知以外の理由ではないかと考えてみる。

・自分にとって決定的な証拠に見えるものになぜ相手が反応しないのか、直接疑問をぶつけてみる。

が提示されています。

 

これはほんと、その通りだと思います。

私たちは、ついついこうして相手の立場になって考えることを怠り、「相手が無知だから正しい判断ができないんだ」とする欠如モデルに陥りがちなんですよね。

 

「相手が誤った主張をするのは知識不足だから」と考えてしまうバイアス――「欠如モデル」

人は「ないがしろにされた」「尊重されていない」「バカにされている」と感じると心を閉ざす生き物です。

欠如モデルに陥ると、伊勢田先生も指摘されてた通り、「正しい知識を教えてやろう」という態度になりがちで、その上から目線な姿勢が、かえって対立を深めてしまうことがあるんですよね。

「欠如モデル思考」は専門家も非専門家も陥りやすい人間の特性で注意しないといけない、という伊勢田先生の指摘は耳が痛く、改めて江草も反省しなくてはと感じました。

 

共通の足場を見つけるというクリエイティブワーク

相手との共通の足場を見出すためには、一歩引いて俯瞰する目線が必要になります。

そのためのスキルとなるのが「クリティカル・シンキング」や「メタ思考」と言われる思考法です。まさしくこれは「立ち止まって、考える」ことと同義とも言えるでしょう。

今のコロナ禍のように人同士で力を合わせて協働しないといけない緊急時に、意見の対立でいがみあってばかりではいられません。

こんな時だからこそ、「立ち止まって、考える」ことが必要なのだと思います。

 

何かの交渉術の本で「お互いに立場の異なる者同士の一致点を見出す作業はクリエイティブワークだ」と読んだことがあります。

意見の相違がある中で、共通の足場を見つけるという作業も、同様のクリエイティブな作業なのだと思います。

地道で大変ですが、人類の未来を創るためにも、これを丁寧にやる他ありませんね。

  

以上です。ご清読ありがとうございました。

 

 

※なお、せっかくですので、参考書籍として、講義内でも出てきたこの本を紹介します。

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