> [!NOTE] 過去ブログ記事のアーカイブです おはようこんにちはこんばんは、江草です。 今日は、画像診断AIに関して、「おや?」と感じた疑問を軽くお話します。 疑問の内容はタイトルの通りなんですけどね。 江草は全然AI業界事情に関して明るくないので、以下書くことは素人の素朴な疑問として聞いてください。 さて、「AIは画像診断に向いてるぜ」ってことで、画像診断AIが各所で開発、実用化されてきています。 それを見て「夢のようだ」楽しみに思う人もいれば、「仕事が奪われる」と悲しむ人もいるかもしれません。 江草はどっちかというと楽しみにしてる方です。 ただ、某社のAI画像診断ソフトの紹介サイトを見ていたところ、ちょっと気になる文面が。 > 院内での自己学習は行われません。 > 現在の日本の薬事法にて、PMDAの承認時の精度が変わることは不可とされております。 > もし、AIが指摘できなかった症例があれば、データを頂戴し、社内で精度向上をさせたバージョンを医療機関様へバージョンアップという形で適応する事となります。 > https://eirl.ai/ja/eirl-brain_aneurysm/  (2021.03.25時点) さらりと書いてある箇所なんですけど、「あれ、将来的にこれ困ったことにならない?」と引っかかるものを感じたんですよね。 いや、この引用させていただいたソフトウェア自体についてはあまり関係ない話なんです。 脳動脈瘤とか肺結節みたいなシンプルな病変を検出する段階のAIでは問題にならないと思うんです。 風評につながっても申し訳ないので、このソフトが良いとか悪いとか言う話でないことは強調しておきます。 江草が心配してるのは、もっと未来の、もっと複雑な病態を診断する時の話です。 この「院内で自己学習させられない」というのが法律上固まってる事項だとすると、今後複雑な診断を出力するような画像診断AIが活躍する妨げになるんじゃないかなと。 江草の素朴な未来イメージは、高度な画像診断AIが、院内の症例に応じて学習、成長していって、次第にその施設に最適化された結果を出力してくれると思ってたんですよね。 ですが、この法的制限の話が本当だとすると、院内でAIが成長してくれることはないことになります。 すると、それはつまり、全国――いや、下手をすると全世界レベルで――同質に調教されたAIが導入されるということですよね。 でも、そんな均質なAIで大丈夫なんでしょうか。 たとえば、高度に専門的な診療をしてる施設と、主にcommon diseaseを診療してる中小施設で、同じAI判断が求められるかというと、やっぱ違うと思うんですよね。 もっと具体例を言えば、そうですね、エキノコックスみたいな風土病あるじゃないですか。 北海道と他県では検査前確率が絶対違うのに、全く同じように学んだ結果を出力されても困らないでしょうか。 北海道なのにエキノコックスが鑑別に出てこなかったり、本州でエキノコックスの鑑別を強く推されても、って思いませんか。 さらに言えば、癌診療に力を入れてる施設では「免疫チェックポイント阻害薬の薬剤性肺炎」を鑑別に入れてほしいけれど、特に癌診療を行ってない施設でその鑑別を入れられても困るし、なんてのもあるかもしれません。 つまるところ、医療機関によって、地域や診療科の特性、患者層などなど、画像診断するにあたって異なる点が多いはずですよね。 その違いをAIがローカル環境で学習することができないのはまずいんじゃないかと思うんですよ。 おそらく、生身の人間の放射線科医であれば、経験的に異なる施設に赴いた時は、そこがどういう施設かを念頭に、自然と異なる検査前確率を想定してレポートしてると思います。 そうしたローカライズ対応をする可能性がAIではのっけから法的に無理になってるとすると、せっかくのその実力が活かしきれないんじゃないでしょうか。 もちろん、法律は守らないといけないと思いますし、その他様々な事情があってそうなってるんだとも思うのですが、AIの将来の発展を期待してる者としては、ふと気になったんです。 まあ、まだまだ先の話だと思いますし、心配しすぎかもしれませんけれど。 そもそも、江草の勘違いで、AIの院内学習が、法的にも容易に許可される道筋が実はあるのかもしれませんし。 あくまで、ただ素人の素朴な疑問ということで、お許しください。 ところで、突き詰めると、この問題は「画像診断において検査前確率をどのように扱うべきか」という問いにもつながるんですよね。 これ、けっこう掘り下げると面白いテーマだと思うので、気が向いたらまた別の機会に語ってみたいと思います。 以上です。ご清読ありがとうございました。 #バックアップ/江草令ブログ/2021年/3月