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JRの車椅子乗車拒否問題が議論になってます。
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声を上げられた伊是名氏の気持ちも分かるものの、なかなか悩ましい問題です。
ネット上では「その対応に追われた駅員さんたちこそかわいそうだ」とJR側に同情的な声が少なくありません。
確かに、その通りです。さぞ対応された駅員さん達は大変だったかと思います。
そもそも駅員さん達は雇われの身でしかなく、JRの意思決定者ではありません。
バリアフリーが進んでないのは彼らのせいではないのです。
駅員さん達はかわいそうです。
みんなの言う通りです。
今回の問題以外にも同様の例は他にもあります。
ビニル袋が有料化になった時に、ビニル袋を巡って客とトラブルになったバイト店員の話に同情の声が上がったことがありました。
確かにその通りです。
雇われのバイト店員がビニル袋の有料化を決めたわけではありません。
彼らのせいではないのです。かわいそうです。
「こんなに早く追い出すように退院させるなんて」と患者に文句を言われる病院職員も大変です。
彼らが在院期間短縮の国策を決めたわけではないのです。かわいそうです。
このように、文句を言われてるものごとが、その人たちのせいではない事例が、今の社会では山ほどあります。
だから、私たちは、たとえ不満があっても「この人たちが決めたわけじゃないしな」「この店員さんに怒っても仕方ないしな」と気持ちを抑えることもしばしばです。
無実の人を傷つけない。
それはやはり正しいことなのでしょう。
ですが、どうでしょう。
駅員さんや店員さんに文句を言っても仕方ないとして。
では、どこに文句を言ったらいいのでしょうか。
「お客様からの声をお待ちしています」と語るご意見箱に投書すれば、聞いてもらえるのでしょうか。
コールセンターに電話して、「ただいま大変混み合っております」といつものメッセージを乗り越えて、自分の思いを熱弁すれば、熱意は通じると言っていいのでしょうか。
ひっそりと行われ、時々サクラも混ざり込んでいる「パブリックコメント」に丁寧に意見を書けば、「なるほどその通りだ」と政治家の面々が納得してくれることがあると言えるのでしょうか。
「投票所に行こう」などと言われずとも、ちゃんと投票してるけれども、何も政治が変わった様子がない。そんな無力感が広がってないでしょうか。
意見を聞く窓口とやらに、自分の声を投げ入れてみたとしても、水に入れたトイレットペーパーのごとく、すぐにとろけて流されていってしまうような感覚。
あまりの手応えのなさに、本当にこの行為に意味があるのかさえ怪しみたくなる。
結局、世の中、万事その調子で、意見を聞くべき「本当の意思決定者」とやらが、とにかく自分たちから遠すぎるのです。
そんな状況下で、みな「自分の声が聞かれてない、届いてない」と怒りの気持ちや無力感を溜め込んでしまうのではないでしょうか。
ここで、「駅員さんや店員さんは無実だからかわいそう」と言ってしまうのは、言わば彼らを「人間の盾」にするようなものです。
「無実の人間」を前線に置いておいて、「彼らに攻撃する者こそが悪である」と牽制している構造です。
そして事実、私たちはその牽制構造の「鉄壁の守り」に折れて、「自分の意見を抑えること」を覚えてしまってます。
「意見を言っても仕方ないから」と。
現状が自分の忍耐の許容範囲内であれば、それでもまだなんとかなります。
しかし、多分、もう我慢しきれなくなった人々も居るのです。
恵まれない状況に追いやられている人たちこそ、その傾向は強いでしょう。
つまるところ、彼らは、自分たちが「無実の人間を攻撃する罪」を犯してでも、たとえその身が「悪人」と非難されようとも、社会に向かって叫ぶしか手がなくなってるのではないでしょうか。
それは決して褒められた「上品な」行為ではないかもしれません。
でも、それほどまでに追い詰められてる人々がいる可能性に、私たちは想像力を向けなくてよいのでしょうか。
私たちは無意識のうちに、「人間の盾」を用いて、臭いものに蓋をしているだけになってはいないでしょうか。
現代社会のどこかしこにも見られる「人間の盾」の仕組み。
それが何を守っていて、誰を追いやっているのか。
自分が「盾の内側」に居るのか、「盾の外側」に居るのか。それとも「盾そのもの」なのか。
私たちが今一度、考えるべき大事なことだと思うのです。
以上です。ご清読ありがとうございました。
(一応、ご参考までに「人間の盾」のwikipediaリンク貼っておきます)
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#バックアップ/江草令ブログ/2021年/4月