おはようこんにちはこんばんは、江草です。
今日は、国の借金の増大に伴う将来世代の負担増加を心配する意見について物申そうかと思います。
結論から言えば「将来世代の負担を心配するなら、国債残高よりもまず、将来世代人口そのものが減る少子化を何とかするのが先でしょう」となります。
財政規律派に人気の「将来世代に負担を残すな」論
国債残高[1]国の借金の増加をどう捉えるかは、世の中でも熱い議論が繰り広げられてるテーマの1つです。
議論において、国債の膨張を危険視する財政規律派[2]ざっくり言えば政府の赤字をなくしたい派は、主要な一大勢力です。
国債の膨張を危険視する根拠として財政規律派に人気なのが「将来世代に負担を残すことになるから」という理由です。
たとえばこちら。
これにより21年度末の国債発行残高は990兆3066億円と、1000兆円の大台目前となった。この借金返済は孫やひ孫、玄孫の代になっても圧し掛かり続ける。
財政の一段の悪化はコロナとの闘争という意味ではやむを得ない面はある。だが、それでも構わないい[3]原文ママとは言えない。赤字を後代に押し付けたままにするべきではないとなれば、対処方針を示しておくのが我々の世代、政権の責務でもある。
「コロナ課税で将来負担軽減へ」
https://japan-indepth.jp/?p=56010
この「国債は将来世代の負担になる」という意見にはMMT派をはじめ反対意見も多く、この是非そのものがまさに議論の天王山ではあります。
その議論はここでは脇に置いておいて、今回は仮に財政規律派の言う通り「国債は将来世代の負担になる」という意見を受け入れたとしましょう。
しかし、江草としてはそれでも釈然としないところを感じるのです。
財源を根拠に少子化対策への予算拡充を渋るという矛盾
なるほど、国債が将来世代の負担になるとするならば、確かに将来世代の負担を憂い、国債を減らすことを検討する必要はあるでしょう。
しかし、将来世代の負担を憂うならば、同時にもうひとつの要素も検討する必要があるはずです。
それは、将来世代の人口です。
将来世代の人口が減ってたら意味がない
将来世代の負担となる国債の残高が減っても、それを担う将来世代の人口が減っていれば、将来世代1人あたりの負担はあまり減らないか重いままです。下手をすると、より負担が増加する可能性すらあります。
なので、将来世代の負担を憂う気持ちを理由に国債残高の積み残しを心配するならば、同時に少子化対策にも積極的になっていなければ筋が通りません。
少子化対策に積極的とは言えない政府
ところが現実には少子化対策に積極的とは思えない政府の動きが見受けられます。
政府は中学生までの子供がいる世帯に支給する児童手当について、所得制限を超える場合子供1人当たり月額5千円を支給する「特例給付」を来年度中に廃止する方向で検討に入った。支給額の算定基準も、世帯で最も稼ぎが多い人の収入をベースにする制度を世帯全体の収入を合算する方式へ切り替え、捻出した財源を菅義偉首相が掲げる待機児童の解消策に充てる。
(中略)
政府が見直しを検討するのは、待機児童対策に必要な財源を確保するためだ。
<独自>児童手当の特例給付、廃止検討 待機児童解消の財源に
https://www.sankei.com/politics/news/201106/plt2011060001-n1.html
これは結局違う形に修正された改革案ですが、政府の姿勢を見るには十分な事例でしょう。
ざっくりまとめると、財政が厳しいのもあるし、まさしく将来世代を育てるための政策である「児童手当」や「待機児童の解消」といった予算の総額を増やす気はないから、「児童手当」を減らした分を「待機児童の解消」の分に充てようとした、という話です。
みなさん御存知の通り、日本の少子化の進行には歯止めがかかっていません。その中で、将来世代を育てるための予算を増やす気がないというのは、少子化対策をする気がないと受け取られても仕方がないでしょう。
先日の「逃げ恥」スペシャルドラマでも、時短勤務を選んだ時に育児休業給付金が減少することを「世知辛い」と嘆いているシーンがありましたが、まさにその通り、まだまだ育児環境は「世知辛い」のです。
しかし、これはおかしな話です。財政を立て直すのは将来世代の負担を軽くすることが理由だったはずなのに、財源のことばかりを気にして負担を担う将来世代の人口が減ってしまっては本末転倒です。
将来世代を憂いているはずなのに、やってることが矛盾しているのです。
将来世代には国債を積んででも投資せよ
本心から将来世代のことを想っているならば、少なくともまず他分野の政策から、少子化対策の政策へ予算を移し替えるぐらいの姿勢は必要です。
それができないというならば、いっそ少子化対策に限っては国債を発行してでも予算を拡充すべきでしょう。
「国債が将来世代の負担となる」という仮定を是とすれば、国債発行は将来世代の負担を増加する要素とはなりますが、効果的な少子化対策を打ち、それが奏効すれば、国債に予算を頼ったとしても将来世代一人あたりの負担を減らすことは十分理論上可能なはずです[4]「国債総額/将来世代人口」なので、どちらの増加がより強いかという算数レベルの話です。
もちろん、国債を使った上で下手な少子化対策を打てば、より状況が悪化する可能性はあります。しかし、少なくとも「財源がー」と言って早々に少子化対策の予算を諦めるようでは話にならないでしょう。
将来世代に本当に同情しているならば、まず金を積んでください。
話はそれからです。
以上です。ご清読ありがとうございました。
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