デジタルなゲームって親御さんたちから嫌われがちです。
でも、個人的にはゲームの教育効果はけっこう侮れないんじゃないかなと思っています。
ゲームが教育に期待できる点を2つほど挙げてみます。
まず一つは、「多様なルール環境の適応訓練になる」です。
各ゲームはそれぞれゲームのルールが全く異なります。
たとえば、パズルゲームやアクションゲームでは、世界観そのものがまるで違います。
複数のジャンルの多彩なゲームをプレイすることで自然と多様なルールを経験することができるのです。
もちろん、公園などでやるようなアナログな遊びでもそれぞれルールは違うのですが、どうしても重力などの現実世界の物理法則に左右されるので、デジタルゲームほど極端なルール変化はありません[1]ただし、身体を動かすことができるなど、これはこれで良い面はたくさんあるでしょう。
あるいは、ボードゲームやカードゲームも、多彩なルールがあります。ただ、世界観は想像力に委ねられるところが大きいですし、プレイヤーが実質的に審判や管理者を兼ねているので、行動の結果の把握は各自で計算したりルールを適宜参照する必要があるなどひと手間かかるのが難点です[2]ただし、これはこれで想像力や計算力、管理力に関する教育効果はありそうです。
これらに対して、多種多様な世界をありありとシミュレートし、しかも自身の行動の結果が即座に自動でフィードバックとして返ってきてくれるのはデジタルゲームならではの長所と言えます。
ゲームという多様なルール世界のいわば「シミュレーター」を通して、「自分はどういう行動選択をするのが最善か」を繰り返し考えることは、社会に出てからその場のルールを把握し適切な行動を取るための良い訓練になるのではないでしょうか。
もう一つは、「他者の存在を理解する経験になる」です。
これは特に対戦ゲームでの話になります[3]対戦でないゲームでは、ゲーム内の隠された謎やコツを探る過程で、ゲーム開発者の意図を推し量る訓練になります。
対戦ゲームではお互いに自分の勝利を目指して戦います。
当然ながら自分は相手の勝利を邪魔するように動きますし、相手は自分の勝利を邪魔するように動くでしょう。
対戦ゲームでは、そうした条件下で、「自分はどう対応するべきか」「相手は何を考えているのか」を考え続けることになります。
これは「自分の思い通りにならない他者がいる環境のシミュレーション訓練」に他なりません。
社会に出たら、自分の思い通りにならない他者でいっぱいですから、これはいい経験になると言えるのではないでしょうか。
特に、秘匿された相手の真意をここまで真剣に推し量るのは対戦ゲームならではです。
「相手の立場になって考える」ための、最強の無言のコミュニケーション経験と言えるでしょう。
もっとも、アナログな遊びでも対戦ルールの遊びは存在します。
将棋や囲碁なんてまさしくそうですね。個人的には将棋や囲碁もとてもオススメです。
しかし、デジタルゲームでは、先程も説明した通り、ゲームを変えることで、多様なルールが体験できるのが強みです。
このルールでは人はどう動くか、あのルールでは人はどう考えるのか、こうしたことを繰り返し考える経験は大人になっても価値があるのではないでしょうか。
というわけで、ゲームの教育効果として期待される2点「多様なルール環境の適応訓練になる」「他者の存在を理解する経験になる」を紹介してみました。
もちろん、それでも、子どもがゲームにハマりすぎることを心配する親御さんは少なくないでしょう。
ただ、何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」で、やりすぎが問題なのはゲームに限った話ではありません。
それによって、ゲームの良い面をみすみす見過ごすのももったいないでしょう。
特に、今や世の中は先が見えず変化の激しい、いわゆる「VUCA時代」になったとも言われています。
一律全員に課せられる固定的な教科勉強をやるばかりだけでなく、こうした「複雑な遊び」を通して、「多様性」や「変化」に慣れ親しんでおくのは悪くないことではないでしょうか。
以上です。ご清読ありがとうございました。
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