放射線科医・画像診断医るな先生のご著書を拝読しました。
るな先生(@R19890529)と言えば、twitterの放射線科医アカウントの中でも有数のフォロワー数を誇ってらっしゃる発信者です。
画像診断の知見や、画像診断関連の書籍の情報を、丁寧に発信されることに日頃より努められていて、その常に学びに誠実な姿勢に、江草もかねてから一目置いております。
そのるな先生が満を持して出されたご著書。
意外だったのがそのテーマです。
まさか「画像診断」でなく「医療法務」とは。
しかし、考えてみますと、これは大変大事なテーマです。
るな先生ご自身も序文で指摘されている通り、法的トラブルの実際について医療者は無知なまま現場に放り出されます。
そうすると、何が法的にトラブルになるか、五里霧中の状態なので、どうしても思いがけない過ちをしでかしてしまったり、逆に防衛医療に走りやすくなったりします。
これは間接的に、適切な医療行為(もちろん画像診断含め)を行う支障になりえます。
したがって、医師が医療法務もいくらか学んでおくことは、良い医療を行う上で必要なことと言えるでしょう。
医療に誠実な姿勢の、るな先生なればこそ、放置されがちなこの問題に注目されたのでしょう。
ただ、「医療法務」を学びたいと思っても、医師はほぼ門外漢のジャンルです。
なので細かいところは法律の専門家に尋ねるしかないわけですが、弁護士や行政書士さんの知り合いが居る方もまれでしょう。
そこをなんと本書では、るな先生が弁護士さんや行政書士さんに直接インタビューしてくれているというわけです。
助かりますね。
リアルでも人的ネットワークが広い、るな先生。さすがです。
さて、肝心の本の内容ですが。
一言で言えば、大変おもしろいですし、ためになります。
これを読んだ方には、機構認定共通講習単位を10単位ぐらいは付与していいんじゃないでしょうか。
それぐらい勉強になる話で盛りだくさんです。
たとえば、放射線科医がレポートで日常的に記している
- 「疑います」
- 「可能性があります」
- 「矛盾しません」
といった言葉が、法的にはどういう意味として捉えられるか、みなさんご存知でしょうか。
ご存知でない方は、この本を読みましょう。載ってます。
その他にも、
どういう時に「画像診断医の見落とし」が法的に問題とされるのか。
法的トラブル回避のためにはどうカルテを書くべきか。
添付文書はどれぐらいきっちり守らなければいけないか。
などなど。
誰しも疑問には思ったことはあるけれど、調べようもなくて放置していた問題を、るな先生がドシドシ法律の先生に尋ねてくれています。
ありがたい話です。
読みながら「そうそう、これが知りたかったんだよ」と、どんどん日頃の疑問がスッキリしていく本なので、非常に爽快な読書体験が得られます。
また、この本は、文量もさほど多くはないのと、会話調なので大変読みやすい本です。
業務の合間でも、みなさん休憩がてらに読めるのではないかと思います。(江草は通勤中に読みました)
それにしても、会話を文字に起こすのは大変な作業だったはずです。
対談の文章化は、ただ単に音をそのまま文字に変換すればいいわけでなく、情報を整理し編集することも不可欠なので、見た目以上に骨が折れる作業だったと思われます。
その苦労を経ながらこの読みやすい文章をまとめられたと思うと、るな先生の献身の偉大さにひれ伏す他ありません。
注意点としては、本書は電子書籍なので、kindleでしか読めません。Kindle Direct Publishing(KDP)なのだと思われます。
しかし、こうしたニッチなテーマとKDPの相性の良さを、今回のるな先生の書籍で痛感しました。
twitterやnoteやブログでは収まりきらないけれど、かといって正規の出版社に持ち込むほどの大掛かりで万人向けの企画とまでは言えない。
こうした時に、ちょうどその隙間を埋める媒体として、KDPで電子書籍として発刊できる選択肢があるのは、とても良い世の中になったなと思います。
いつか江草も何か書きたいですね。
以上です。ご清読ありがとうございました。
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