ディスカッションの多様性

会話のイラスト社会

おはようこんにちはこんばんは、江草です。

今日はディスカッションの多様性について。

 

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」とした発言が物議を醸しています。

もとより失言が多い方でしたが、再びの問題発言であり、今度こそはさすがに進退が問われるべきでしょう。

 

しかし、森会長の発言をよくよく読むと、女性蔑視の問題だけでなく、日本でありがちな会議やディスカッションのあり方自体の問題点をも象徴しているように感じます。

 

問題の発言は具体的にはこれですね。

女性理事を4割というのは、女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります。これもうちの恥を言います。ラグビー協会は倍の時間がかかる。女性がいま5人か。女性は競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分もやらなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。結局、女性はそういう、あまり私が言うと、これはまた悪口を言ったと書かれるが、必ずしも数で増やす場合は、時間も規制しないとなかなか終わらないと困る。

森会長「私が悪口を言ったと書かれる」/発言全文2

 

もともとあまりまとまったスピーチでもないので要領を得ない部分もありますが、どうも「会議でみんなが発言すること」や「会議に時間がかかること」にネガティブなイメージを持っているようです。

逆に言えば、「あまり発言が出ずスムーズに会議が終わること」を重視しているわけです。 

もちろん、無意味な発言や、無駄な時間で会議が長引くことはいいことではないでしょう。

しかし、日本では会議とは名ばかりで実質的なディスカッションがほとんどない「しゃんしゃん会議」が横行していることを考えると、森会長の発言はまさしくそんな日本的なディスカッションの現状を象徴していると言わざるを得ないのではないでしょうか。 

 

最も大きな違いは「発言の量」です。日本人の会議はしゃんしゃんで終わる。喋りの得意な一人だけに発言が偏っていたり、あるいは発言自体はそこそこ出たとしても、結局は声の大きな人や上司のひとことで物事が決まってしまって、「この会議の時間は一体何だったんだ」と思わされたりすることも多い。

(中略)

会議がまとまらないのも問題ですが、「言ったところで何も変わらないから」とか「反論されるのが怖いから」などと空気を読んで、発言する前に自ら意見を取り下げてしまう人が多いのは、日本の会議の大きな問題です。

日本人が知らないグローバル会議の作法、多様な意見をまとめる「ロバート議事法」とは

 

そもそも会議が何のためにあるかと考えれば、マニュアルやルールなどを単純に当てはめるだけでは一概に答えが出せない問題や、未来のプロジェクトなどの正解などそもそも存在しないクリエイティブな課題について、色んな人の意見を交換して方針を決めるためにあるはずです。

つまり、会議とは、複雑で答えがない議題をディスカッションするのが前提です。

それなのに、発言が少なくてトントン拍子に予定調和的に済むような会議は、ただ形式上「会議を行った」というアリバイ作りのためでしかありません。全くもって会議の本質的な意味が損なわれています。

特に、森会長のような権力者が「意見が出ずに時間かからず会議が終わるのが良い」と発言する場合、実際には独裁を敷いているのだけど外向きにはそれを隠したいから形式的に会議を行ってるだけ、と疑わざるを得ないでしょう。 

自分の意向を押し通すべく、形式的にのみ会議を行いたい権力者にとっては、会議で異議を唱える者は邪魔なので、会議のメンバーの多様性を排します。要するに会議を自分のイエスマンで占めさせるわけですね。

それが女性を邪魔者のように扱う今回の発言の正体だと江草は感じます。

 

ただ、こうした会議の多様性が軽視された姿というのは、残念ながら今回の森会長だけでなくそこかしこに見られるものです。

たとえば、江草は以前学会で「働き方のダイバーシティ」的なテーマのパネルディスカッションを聴講した時、そのパネラーが大学病院や医療センターなどの大病院勤務の医師ばかりで、衝撃を覚えた記憶があります。

働き方のダイバーシティ(多様性)をテーマにしてるのに、パネラーの勤務形態に多様性が全然感じられないというのはとてもまずいと思うんですよね。

もちろん何か事情や考えあってのことだったのかもしれませんが、これには正直江草も苦笑いするしかありませんでした。

 

今回の森会長の発言も、人の振り見て我が振り直せです。

森会長の発言は、私たちもディスカッションの多様性を担保するよう会議文化を反省するよい機会なのではないでしょうか。

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

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