診断とクリティカルシンキングは似ている

医師たちのイラスト放射線科

医師は科が違えば、全く異なる時空間に生きています。

 

秒単位で動く、救急、麻酔科、産科。

臓器単位で動く、消化器科、心臓血管外科。

 

そんな中、CTやMRIなどの画像診断を主に担う放射線科の時計は、医師の中では比較的ゆっくりで、秒単位のことはまずありません[1]造影剤のアナフィラキシーショックとかありますが

空間的対象も、臓器の枠を超え、人間の身体全てが管轄範囲です。

 

早い時計、遅い時計。

狭い視野、広い視野。

どれが良い悪いではなく、人の身体を診る時に、それぞれ異なる時空から捉える役割分担が必要なのです。

 

 

大体の場合、現場の医師の第一印象の診断は合ってます。

裏方にいて患者自身に会うこともない放射線科医より、患者自身のgeneral appearance(全身の外観)や細かい病歴を体感をもって知っている現場の医師のアドバンテージは大きいです。

放射線科医が頼りとする検査画像も、もちろん現場の医師もチェックしてます。

だから、診断のための情報量としては放射線科医はハナから劣勢です。

 

でも、それでも放射線科医が必要な理由があります。

それがまさしく放射線科医の住む時空間の雄大さです。

遅めの時計と、広い空間がポイントなのです。

 

大体の場合、現場の第一印象は正しいと言いました。でも、それは裏を返せば、時に第一印象が誤ってる場合があるということです。

また、臓器単位で着目すると、視野はどうしても限定されます。それで、臓器の少し隣で起きていることに気づかなかったり、多臓器をからめて全身的に複合的に起きている異常が盲点になってることがあります。

 

だから、本当に現場の第一印象の診断で正しいのか、あえて疑って、一歩立ち止まって考える。

一分一秒を争う忙しい現場の医師に代わってクリティカルシンキングをする。

それが、秒針に慌てることなく、臓器の境界を越えて診ることができる放射線科医の役割なわけです。

正しい診断のために、誰かがやらねばならない必要な役割ですし、やりがいがある仕事です。

 

 

 

ときに、何事もこういう「診断の目」は必要なのではないかと思うのです。

すなわち、社会の様々な問題だって、立ち止まって考えることが不可欠ではないか、と。

 

もちろん、何かが起きた時、皆がまず感じる第一印象が合ってることは多いでしょう。

でも、それもやはり必ず正しいというわけではないはずです。

 

だから、何でも即断する前に、少しだけ「診断をしてみる」ために、慌てない時間を、俯瞰した視点をもってほしいと思うのです。

 

ほんの少しだけなら、最初の直感を疑うことは損はないはずです。

考えた結果、直感が正しければ、それはそれでいいのですから。

 

 

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

 

脚注

脚注
1 造影剤のアナフィラキシーショックとかありますが

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