書店で、本に呼ばれた気がしたので、気づいたら買ってしまっていました。
『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』
結論から言えば、「当たり」でした。
フェイクや誤謬が世にはびこるSNS時代に必携の一冊だと思います。

「バイアス」という言葉は、医療界ではおなじみですが[1]医学研究では結論の妥当性を保証するために、研究のデザインや結果の解釈にバイアスがないか徹底的に吟味されます、最近では一般的にもよく聞かれるようになりましたね。
「バイアス」とは、単純に言ってしまえば、誤った判断や主張につながる「人間の心理や思考の悪いクセ」です。
たとえば、有名なのは「循環論法」。結論をそのまま前提に使ってしまうことを言います。
本書から例を引用しますと、
「Aさんの言ったことは信用して大丈夫。なぜならいい人だからなんだけど、それはAさんを信用できるからだよ」
フォレスト出版 情報文化研究所『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』p26
こんなやつです。
なんかモヤッとしますよね。
これは間違った論証、すなわち「ヘリクツ」なのですが、日常ではもっと複雑な構造をとってる場合も多く、意外と気づけません。
ただ、事前にこういう「バイアス」が存在することを知っておけば、気付ける可能性は上がるでしょう。
できる限りこうした誤りを犯さないために、私たちは「バイアス」を学んでおくべきなのです。
・膨大な情報に流されて自己を見失っていませんか?
・デマやフェイクニュースに騙されていませんか?
・自分の頭で論理的・科学的に考えていますか?
本書を読み終えた読者は、これらの3つの質問に「イエス」と答えられるはずである!
フォレスト出版 情報文化研究所『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』p6
まえがきでの、この力強い宣言はさすがに少々おおげさではあるものの、実際、SNS等々にはびこるフェイクや誤謬に惑わされないために、現代人必携の一冊ではあると思います。
さて、本書の構成についても紹介しておきます。
本書は「論理学的アプローチ」「認知科学的アプローチ」「社会科学的アプローチ」の3部構成です。
各部それぞれのジャンルから、20ずつ、計60個もの認知バイアスが紹介されています。
解説はコンパクトでありながら詳しく、下線やイラストも活用され、非常に読みやすく分かりやすいです。
ひとつのバイアスにつき解説4ページと、統一されたレイアウトも快適で、リズムよく読むことができます。
大学の教科書や副読本として用いられることも意識しているとのことで、各項目にちゃんと参考文献リストが提示されており、丁寧で安心な作りです。
通読するだけでも楽しく[2]バイアスはいわばみんな共通の「あるある失敗ネタ」ですから、面白いのです、その上、勉強になるすばらしい本です。
さらに、厳選された60個の認知バイアスが一冊にまとめられてることで、まさに「事典」として活用しやすいのが非常に良いです。
これまで江草は「バイアス」を確認したい時は、下記のサイトを参照することが多かったのですが[3]かなり充実した良サイトです、本書では各バイアスに丁寧な解説もついているので、今後は本書を参照することが増えそうです。
日常会話やSNSで、「自分こそ勘違いしてないかな」「どうもこの意見おかしい気がする」などとモヤッとした時には、本書(や上記のサイト)を読めばヒントになる項目があるかもしれません。
本書で紹介されてる60個のバイアスの中では、「信念バイアス」「スリーパー効果」「システム正当化バイアス」が江草のオススメです[4]ちょうど本書内の各ジャンルから1個ずつ挙げてみました。
バイアスを「オススメ」と言うと変に聞こえそうですが、「恐ろしいバイアス」として知っておくことをオススメする、という意味ですよ、もちろん。
知らなかった方は、ぜひ本書で確認してみてください。
以上です。ご清読ありがとうございました。
コメント