社会に過激なタイトルが蔓延している問題

ドキュメントのイラスト社会

おはようこんにちはこんばんは、江草です。

今日は世の中に過激なタイトルが蔓延している問題について少し考えてみます。

 

記事内容以上に過激化するタイトル

昨今、コロナワクチンに対して不安を煽る記事が次々と炎上しています。

主に、医師の発言をその意図に反して都合よく切り取ったり、「接種したくない」という意見を強調して提示してる点が批判の対象になっています。

医師の発言を都合よく切り取っている記事は論外ながら、「接種したくない」意見を強調している記事については気になる特徴が見て取れます。

それは、記事の内容以上にタイトルが過激である点です[1]もちろん、記事の内容も問題ですがその話もすると長くなるので今日はおいときます

 

炎上してるオリコンニュースの中身を見ると

たとえば既に記事が削除されているオリコンニュースの問題の記事のタイトルは【新型コロナワクチン、6割超「受けたくない」 女子高生100人にアンケート】というものです[2]問題の記事が消えていたので、こちらより引用しました。https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/oricon-vakzin

確かに「受けたくない」ことを強調してるタイトルと言えます。

ただ、実際のこの記事の中身をアーカイブで見てみると、「ワクチンを受けたくない人」の意見だけでなく、「ワクチンを受けてる人の意見」も一応は同程度には載せているんですよね。

また、ワクチンを受けたくない人の話ばかりでできてる記事というわけでもなく、次々と別の話題に移っていて、特別「ワクチンを受けないこと」を強調した記事の構成でもないのです。

もちろん記事の内容に問題は山積みです[3]アンケート方法の妥当性だったり、その結果をうけての背景調査や考察やメッセージはないのかなど

しかし、これは要は適当にアンケートをしてみて適当に回答をまとめただけの、いわゆるコタツ記事[4]取材に行くことなく書けるような手抜き記事で、そもそも記事に対する熱意が全く感じられないクオリティ、ひいては「ワクチンの不安を煽ってやろう」という意図すら感じ取れない代物なのです。

正直言って、このクオリティだと問題視するというよりは、ほとんどスルーするしかないような記事内容となっています。

ただ、見過ごせないところは、この記事のタイトルです。

そんな、偏向報道とかそういう次元ではない無味乾燥な記事内容にもかかわらず、タイトルは見事に【6割超「受けたくない」】と、偏向したタイトルが付けられているのです。

記事内容以上にタイトルが過激化してる、こうした光景は今の社会を蝕む問題の象徴です。

 

タイトルの暴走

なぜゆえタイトルが特に過激化するかと言えば、結局のところ、タイトルが過激でないと誰も読んでくれないからなんですよね。

商業誌は注目されて読んでもらえないと商売にならないわけですので、どうしても人をついつい引きつける魅力が必要になります。

しかし、記事の内容がいくらよくても、誰にも読んでもらえなければ魅力は伝わりません。

人を引きつけるための努力でコスパがいいのは、何よりもまず最初に目にする「記事のタイトル」です。そうして、記事を読んでもらうために、ひたすらにタイトルが過激化することになります。

その結果、記事内容とタイトルがどんどん乖離する現象が起きています。

 

このことは、今回の炎上記事の1つに関連したツイートが象徴しています。

 

江草の体感上としても、最近のネット記事では、タイトルと記事の内容があまり噛み合ってないケースは少なくありません。

しかも、「もはや記事を書く人がタイトルを付けているわけではない」という噂も聞きます。

モノ作り企業でも商品開発部と広報部と部署が異なるように、「記事を書く人」と「人をキャッチするタイトルを書く人」がどうも分かれてきているようなんです。

これでは、記事を書いた人がいくら記事を良いものにしようとしていたとしても、人をキャッチする仕事の人は「どれだけ耳目を集められたか」が評価対象なので、記事を書いた人の意図から離れタイトルが偏向したり過激化しやすい構造と考えられます[5] … Continue reading

とかく、最近の世の中は、人をキャッチするためにタイトルの暴走が止められない状況に陥っているようです。

 

誰もが他人の注意をキャッチすることに必死な社会

このタイトルの暴走を見て「商業誌の金儲け主義」を非難する声が高まっています。

江草としてもその点に同意はするのですが、正直言うと「商業誌の金儲け主義」だけの問題ではないのではないかと感じています。

なぜなら、商業誌以外にも同じような「キャッチが過激化する傾向」があらゆるところに出現しているからです。

 

たとえば、わざと過激なことをして注目を集めるYoutuber。

露出をUPして注目を集めるゲーム配信者。

過激な意見を断言して注目を集めるツイッタラー。

「○○のまとめ」「△△ベスト10」などタイトルテクニックでついクリックさせるブロガーたち。

などなど。

 

周りを見渡せばあらゆるところに、この「キャッチ過激化」の傾向は蔓延しています。

実際、この傾向を反映して、アテンション・エコノミー(注意経済)という、人の注目ばかり重視される経済を指す概念も出てきています。

 

お金目的ばかりでもない

で、確かにYoutuberなどはいわば「お金儲けのため」に過激化してる人も少なくないと思いますが、実際には「お金儲け目的」でなくとも、私たちはついつい「キャッチするために過激化」しています。

バイト店員が過激な悪ふざけを店内でやってSNSにアップする「バイトテロ」というのもありますし、自身の信念から良いと思ってることをなんとか広めようと思って「拡散希望!」と強調したりします[6]これが往々にしてデマの場合があります

ですから、意外と私たちは「お金目的でなくてもキャッチしようとしてしまう」のです。

江草も細々とブログなりtwitterなりしているので、気持ちは分からないでもありません。

ちょっと過激な言い方をした方がみんなクリックしてくれるかな、反応してくれるかな、なんて気持ちが頭をもたげることは正直あります。

そもそもからしてタイトル付けが苦手なので、結局なんとも言えない地味なタイトルばかりになっていますが、こうした実感としても人の「承認欲求の根深さ」というのは侮れないものがあるように思うのです。

 

もはや煽ろうとすら思ってなさそうなことの方が恐ろしいのでは 

さて、今回いくつかの記事が「ワクチン接種の不安を煽るような記事だ」として問題視されているわけですが、以上に見た話から、それどころか江草はこれはもっと根深いヤバい問題だと感じています

なぜなら、おそらくもはや彼らは「ワクチン接種の不安を自発的に煽ってやろうというレベルにすら達してないから」です。

つまり、自分が反ワクチン派だから「反ワクチン的なタイトルにしてワクチン接種を不安にさせてやろう」という話ですらなく、どうも現実は、自分は反ワクチン派でもなんでもないけど「反ワクチンぽいタイトルの方が注目を浴びやすそう」だから反ワクチンのタイトルを付けたということのようなんです。 

彼らとしては、なんならテーマはワクチンでなくたって何でも良かったんです。注目さえ浴びれば。 

これは、もはや自分の意図や主体性を失った「アテンションエコノミーの奴隷」とも言える態度と言えるのではないでしょうか。

 

しかも、この傾向は商業誌の方々だけでなく、どうやら一般の人をも蝕んでいっています。

これはきわめて恐ろしいことではないでしょうか。

 

コロナ対策のワクチンも大事ですが、この私たちの社会に確かに蔓延してきている「キャッチ過激化」の問題にも早急に対策(ワクチン)が必要のように思います。

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

脚注

脚注
1 もちろん、記事の内容も問題ですがその話もすると長くなるので今日はおいときます
2 問題の記事が消えていたので、こちらより引用しました。https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/oricon-vakzin
3 アンケート方法の妥当性だったり、その結果をうけての背景調査や考察やメッセージはないのかなど
4 取材に行くことなく書けるような手抜き記事
5 うまく両者の連携が取れていればいいのですが、モノ作り企業でも開発部と広報部のコンフリクトはあるようですし、みな共通の課題なのかもしれません
6 これが往々にしてデマの場合があります

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