豊作すぎた昨日発売のマンガ『テロール教授の怪しい授業(3)』『フラジャイル(20)』『ブルーピリオド(10)』感想

読書中の男性のイラストマンガ

昨日(2021年5月21日)発売のマンガが豊作すぎて興奮冷めやらないので、今日はそれぞれについて簡単に感想を述べる回とします!

それにしても、世の作家のみなさん、なんでこんなクオリティ高いの……。

 

 

※重大すぎるネタバレはしないつもりですが、多少はネタバレが含まれるので、全く内容を知りたくない方は念の為お逃げください。

 

 

 

 

『テロール教授の怪しい授業(3)』

テロリストやカルトの手口を懇切丁寧に教えてくださる怪作マンガの第3巻。

 

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相変わらずローレンツ教授の講義は強烈です。

 

「危ない人が普通に見えた」んじゃないんです
大半は「見た目通り普通の人」なんですよ!

『テロール教授の怪しい授業(3)』p74

 

今回は「陰謀論」や「マルチ商法」にハマる人の心理とその対処法の描写に力が入ってましたね。

そういうのにハマる人はえてして「危ない人」と思われがちですが、実はそうではなく、むしろもともと立派で優しい真面目な人だったりする。

人間とはまこと、ややこしいものです。

 

このマンガは、そうした「自分たちとは違う《悪い奴ら》が居るんだ」と、彼我に線を引く考え方に対しては、ずっと警鐘を鳴らされてます。

ほんと、すごく大事なことを言われてると思います。

 

 

今巻で、個人的に特に印象に残ったのは、「代替医療にハマるのは高学歴や高収入者に多い」ことを解説してるシーンです。

短いシーンながら、いわゆる標準治療から脱してしまう人の心理の描写が大変丁寧で感動しました。

 

専門家の助言を否定した自分が間違っていたんだという事実を知った君に
え!?代替療法を信じて大切な人を殺したの??
アホなの?バカなの?プークスクス
と言って軽蔑を浴びせることが問題解決の手段ですか?

言い方って大事でーーーす!

分かりますね?

『テロール教授の怪しい授業(3)』p51-52

 

そしてこの力強いセリフ。

ほんとその通りだと思います。

 

しかし、ワクチン論争界隈を見ていても、残念ながら「欠如モデル」に基づく反応パターンはまだまだ根強いのですよね。

医療者も意識改革が必要だなあと改めて思わされました。

 

なので、医療者のみなさんも本作をぜひ読みましょう。

 

 

『フラジャイル(20)』

有名病理医マンガもついに20巻。

 

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ぶっちゃけどんどん病理から離れていってる気もしますが、作品のクオリティは巻を追うごとに高まってる気がします。

今巻もひたすら熱い!

 

まあ、熱さの大きな要因は英雄志望の暑っ苦しい専攻医が新登場するからですが。

 

「僕はヒーローになりたくて医者になったんです」

「ヒーロー?」

「そう!どんな患者も救う」

『フラジャイル(20)』p42

 

この「確かに有能なんだけど、さすがに自信過剰すぎてトラブルメーカーになる研修医」というのは、実際「研修病院あるある」なので、ちょっと苦笑してしまいました。

 

今巻は、そのイケイケの専攻医の彼が、若い血液ガン患者さんの移植を担当する話が主軸で進みます。

今の所、大事件は起きないまでも、ひしひしと「こりゃタダじゃ済まささそうだな」という嫌な予感が高まってくる展開に次巻が待ちきれないです。

 

そうですね 何もしなければ信頼を裏切ることもないでしょう
失敗した時の予防線を張り巡らせて曖昧な物言いではぐらかす医者
苦しんでる患者と距離を取って自分を守る医者を
僕は何人も見てきました

『フラジャイル(20)』p143

 

実際、各所で先輩医師たちに噛み付いている熱い専攻医クンの言うことも分からなくもないのです。

無難に責任逃ればかり考える防衛医療が問題なのは確かです。

英断や勇敢さが必要な場面は医療にはやっぱりあります。

 

ただ、それと同時に、臆病さと、患者さんとの間合いのとり方の感覚も、医療者にはやっぱり必要なんですよね。

 

ああ、次巻楽しみだけど怖いなあ。

 

  

『ブルーピリオド(10)』

アート漫画の金字塔もとうとう第10巻ですね。(フラジャイルのときと同じ感想なのは気にしない)

 

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相変わらず自分の創作スタイルの方向性に悩みっぱなしの主人公の八虎くんです。

 

ただ、今巻はそれよりなにより「猫vs兎」の衝突する各シーンが熱すぎました。

前巻で闇が深そうな様子をかもしだしまくっていた猫屋敷教授と、最初っから闇だらけっぽい世田介くん。
今巻は前巻以上にますます衝突が激しくなってきましたね。

 

「どうして俺が作りたいものと違う方向に行かせたがるんですか」

「そのままじゃ君何者にもなれないよ!?」

「何者かになる権利はあっても義務はない…と思います…」

『ブルーピリオド(10)』p191

  

目指すべきは「自己表現としての作品」なのか「見る人のニーズに応える作品」なのか、ちょうどこの両者の対立というのは、創作における最大のジレンマなのでしょう。

 

アートには疎いのですけれど、こういうのって人生にも言えるんじゃないかなあと、ぼんやり考え込んでしまいました。

「自分らしく生きよう」とは言われつつも、「他人のニーズ」を無視して生きるわけにもいかない。

だからといって「他人のニーズ」ばかり見ていたら、気づいたときには「自分らしさ」が見つからなくなっている。

まあ、難しいですよね。

 

ただ、そうしたジレンマにもがきながらも成長してる世田介くんと八虎くんを見ていると、自然と自分も「がんばってみようかな」と力が湧いてきます。

結局、多分こういうジレンマと付き合い続けるのが人生だと思うんですよね。

 

 

 

 

 

と、以上、豊作すぎたマンガたちをざっとレビューしてみました。

 

ひたすら気持ちを動かされっぱなしで、つくづく物語のパワーというものは凄まじいなと痛感します。

 

これだからマンガを読むのはやめられないんすよ。

 

 

以上です。ご清読ありがとうございました。

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